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【メンタージャム東京のご報告】
2012年9月 「『中小企業金融円滑化法』終了で何が求められるのか」~講師 笹雄一郎氏
9月12日(水)、東京・麹町会館にて、「メンタージャム東京」を開催いたしました。今回は、株式会社日本M&Aセンター 経営支援室長の笹 雄一郎氏を講師にお迎えし、~大倒産時代の到来か。士業・専門家の役割~「『中小企業金融円滑化法』終了で何が求められるのか」と題してご講演いただきました。
■笹 雄一郎 氏のご講演より
笹 雄一郎 氏
ご講演は、笹氏の自己紹介から始まりました。会社経営の行き詰まりにより、債務を背負った人間がどうなるのかを身をもって体験された同氏。自分が払った高い授業料を他の方に負わせてはならないとの思いから、企業再生の仕事を始められました。全国を飛び回って、債権者(銀行や取引先)と債務者(経営者)の間に立ち、経営者の力を最大限に引き出して自主再生を推進され、それが困難な場合はM&Aを再生手法に取り入れています。
◆なぜ今、出口戦略が必要なのか
笹氏は、全国(九州を除く)の地銀担当者との今年6月からの話を総合し、「金融円滑化法終了後、通常返済のできる中小企業、つまり自主再生ができるのは2割程度しかない」と厳しい予想をしています。
折しも、メンタージャム開催の日、日経新聞朝刊の1面トップに「中小再生へ地域で基金 地銀など、設立急ぐ」という見出しの記事が掲載されました。再生ファンドによる出資や経営指導で中小企業を延命し、企業破綻を避けながら再生の時間を稼ぐ仕組みです。資金繰りに悩む中小企業を支え、地方経済への打撃を和らげる狙いで政府も後押しするとの記事ですが、笹氏は「この再生ファンドの対象になるのは体力のある金融機関と収益力のある企業だけ。体力のない金融機関、収益力のない企業への対応策ではない」と、政府の発表や報道からはわからない現実を解説。しかし、自主再生には資本の投下は不可欠です。顧問先の経営者のために「士業のみなさんは銀行と渡り合って、事業を見直して追加運転資金を獲得することが必要」と、士業にとっていま必要な行動を説明いただきました。
◆中小企業再生の難しさ
中小企業は、社長が大株主であるためガバナンスがきかないことや、ほとんどが単一事業のため経営資源が乏しいなどの理由から、自主再生するには、大企業とは異なる特有の難しさがあります。企業と個人の債務が一体化しているため、個人の自己破産が必須になってしまうという問題もあります。
金融機関側が持つ多くの悩みも説明されました。まず、地元の名士である経営者に抜本的な再生を覚悟させることができない、という点。これは金融円滑化法利用によって一層強くなったそうです。風評リスクが心配で銀行側から引き金を引くことができないという悩みは地方で顕著であり、競争原理が働く都内では少なくなっているそうです。銀行は金融のプロであって経営のプロではないため、B/Sから事業の価値や成長性を見極めるのが難しいことや、会計系のコンサルタントが事業計画の策定を担当しても、肝心な実行は債務者(経営者)任せであることなど、専門範囲による悩みもあるそうです。
◆出口戦略へ向けた専門家の役割
笹氏は、「経営者は“形状記憶合金”であることを前提に、根気強く教えることが必要」と、顧問先の経営者への向き合い方を語ります。再生段階の目線は「自主再生と、M&Aによる他力再生の両にらみが大切」であることや、顧問先のメインバンクの経営状況の把握、クライアントの実質債務者区分のヒアリング、経営者と一緒に悩んで資金繰り表を作成することなど、必要な実務についても具体的に説明してくださいました。
◆再生案件の実例とスポンサーのトレンド
日本M&Aセンター経営支援室の基本姿勢は、依頼者の経営状況に合わせて信頼できる再生実務家と連携をとりながらタスクフォースを結成し、出口戦略を構築することです。再生案件の実例の紹介や、M&Aでスポンサーのつきやすい業種のトレンドを説明くださいました。薬事法改正による薬剤師不足から調剤薬局にスポンサーがつきやすいといったトレンドがある一方で、少子高齢化や国内産業の空洞化による業界再編が起きており、不況業種と思われている業種でもコンスタントにスポンサーがついているそうです。
最後に、「経営者を支えるということは中小企業を支えるということ。それは、国を支えるということなのです」と、力強い言葉で締めくくられました。
笹さま、限られた時間のなかで、すばらしいご講演を本当にありがとうございました。参加者からは、「非常に勉強になった。本当に実務的な内容であり感謝している」「特に債権者の本音は聴きごたえがあり、債務者への向き合い方も勉強になった」「再生業務の担当者として、今までよりもう一歩深く企業に入り込む意欲で進めていきたい」などのご感想が寄せられています。
第2部交流会は、同じく麹町会館にて、笹氏によるご挨拶と乾杯で始まり、名刺交換や歓談、交流などが活発に行われました。また、税理士・経営コンサルタントでメンター会員の喜多村洋子氏に、メンターネットワークの「相続支援隊」が開催するセミナーのご紹介をいただき、社会保険労務士でメンター会員の古澤和哉氏にはメンターネットワークの「社外人事部長研究会」が開催するセミナーのご紹介をいただきました。喜多村さま、古澤さま、ご登壇をありがとうございました。
また次回10月のメンタージャム東京で講師をご担当いただく、司法書士でメンター会員の小保内洋子氏にも一言ご挨拶をいただきました。小保内さま、ご登壇をありがとうございました。
次回10月18日(木)開催の「メンタージャム東京」は、~100万人超の潜在ニーズにどう応えるか~『成年後見の実務ノウハウと専門職後見の可能性』と題し、講師として司法書士法人小保内事務所 司法書士の小保内洋子氏をお招きいたします。
みなさまのご参加を心よりお待ちしております。
2012年10月18日(木)開催「メンタージャム東京」のご案内
~100万人超の潜在ニーズにどう応えるか~
『成年後見の実務ノウハウと専門職後見の可能性』
■お問い合わせ・ご参加お申し込み先:
株式会社コンサルティングファーム メンタージャム事務局
TEL: 03-5212-7272 FAX: 03-5212-6090
Eメール:info@cyber-mentor.org