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【メンタージャム東京のご報告】
2012年1月 『激動する日本社会と士業の進むべき道』~講師 伊藤真氏
1月18日(水)東京・麹町会館にて、メンタージャム東京を開催いたしました。今回は講師として伊藤塾 塾長で弁護士の伊藤真氏をお招きし、~2012年新春提言~『激動する日本社会と士業の進むべき道』と題してご講演いただきました。
■伊藤 真 氏のご講演より
伊藤 真 氏
ご講演は、伊藤氏の自己紹介から始まりました。伊藤塾の塾長として法律家・公務員を養成し、憲法の伝道師として全国でご講演。そして弁護士として1人1票実現運動に力を入れておられます。
◆国民主権の憲法の下、生まれた士業。スタイルは競争から共生へ、そして統合化へ
最初に、士業という仕事へのイメージと、時代とともに変化してきた士業のスタイルについてお話しくださいました。士業とは専門性の高い知識を身につけた人であり、武士のように戦う人。クライアントのために戦う人、法の支配を実現するためになら国家権力のような強い力や、ときに理不尽な力と戦う人。倫理・気概・武士道・精神性の高さ・誇りなどを連想されるそうです。
戦後、明治憲法から日本国憲法に変わり、天皇主権から国民主権へと憲法価値が転換したときに、弁護士、司法書士、行政書士、税理士などの法律家はすべて国民に奉仕する対等な立場となり、それまでの上下関係から横並びの役割分担の関係へと大転換。その結果、士業同士がお互いの仕事を取り合う競争時代もありましたが、いまでは相互補完の共生時代になり、「利他的で求め合える関係、相互の専門性を活用し合えるコラボレーションが重要」とおっしゃっています。
また、伊藤氏は弁護士と他の士業が各々の業種に参入してきている現状や、クライアントの便宜を向上するワンストップサービスの必要性から、共生時代の先にあるものは「士業の統合」とお考えです。統合の具体例として示されたのは、EU統合の後、国際競争力の向上を目的に弁護士、代訴士、法律顧問という専門職を順次、弁護士に一元化し、弁護士の数を18,000人から48,000人へ増やしたフランスの例。折しも日本では「目の前にTPPの問題もあり、EU統合のようなことがおきる可能性もある」と、国際社会を相手にしていくための士業スタイル変化の必要性を説いてくださいました。
◆今の時代、憲法価値は実現されているのか
次に、憲法価値の実現に着目し、今がどういう時代なのかを3つの視点でご説明くださいました。
まず、1つ目に、貧困と格差の急速な拡大により、1人ひとりが大切にされていない社会になり、貧困は自己責任だという社会になってはいないか、と指摘されました。昨年9月時点で、生活保護需給受給世帯は過去最高の約149.7万世帯、受給者数も過去最高の約206.6万人。ワーキングプア(年収200万円以下)は、2006年に初めて1,000万人を超えて以来増え続け、2010年は約1,045万人。これは民間給与所得者の22.96%を占めています。また、餓死者も1995年から急増し、その後の11年間で867人が餓死しているという、驚くべき事実も紹介されました。
2つ目に、犯罪による死亡者数や殺人事件件数は減少しているにもかかわらず、凶悪犯罪のマスコミ報道が目立ち、犯罪者を排除する社会になってはいないかと指摘されました。
3つ目は、昨年3月11日に発生した東日本大震災から10か月以上経っても復興が進まないこと。こういうときこそ政治家が、憲法の理念に沿った復興を主張すべきと指摘されました。大震災からの復興は、慈善でも施しでも、ましてや相互扶助やボランティアでもなく、国家に対して堂々と主張できる人権として憲法に規定されているのです。「政治家が憲法を知らない。国民でもご存じない方が多い」と苦言を呈し、被災地の方々が「尊厳や誇りを持って主体的に生きることができるよう、サポートするのが士業の仕事」と熱く語ってくださいました。
◆法律と憲法との違いと士業に必要な能力
ここで、法律と憲法の違いをご説明いただきました。法律は、国民の自由を制限して、社会の秩序を維持するためのもの。いわば、国民に対する歯止めの役割をもっています。これに対し憲法は、国家権力を制限して、国民の人権を保障するもの。国家に対する歯止めであり、政治家などは憲法を守る義務があります。
なぜ憲法は知られていないのでしょうか。伊藤氏は「自分も憲法に関しては無知、無関心だった。それは、20代前半まで多数派・強者として幸せな生活をしていて、憲法など知らなくても何も困らなかったから」と振り返ります。憲法を理解する上で重要なことは、想像力、イマジネーションを働かせて、他者に共感することだとおっしゃいます。「多数派である強者から少数派である弱者へのイマジネーションや、どんな人も持つ弱い面へのイマジネーション。これが憲法の本質であり、士業に必要な能力」との言葉が印象的でした。
◆あなたの選挙権は一人前以下
最後に、いま弁護士として力を入れている「1人1票実現国民会議」について、ご説明いただきました。日本の選挙権には「男は1票、女は0.95票」といった男女差別はもちろんありませんが、「鳥取県は1票、東京都は0.23票」といった住所差別があると指摘されています。
「1人1票」を実現するために、国会議員選挙と同時に行われる最高裁裁判官の国民審査では、「1人1票」に賛成でない裁判官を罷免しよう、という国民運動を繰り広げられています。ホームページやTwitter、新聞の意見広告、サポーター大会、駅でのチラシ配布など、多様かつ情熱的な活動を実施されています。「これにより違憲判決を勝ち取って、初めて、国民の手で民主主義を手にすることができる」と、熱く語ってくださいました。
伊藤さま、限られた時間のなかですばらしいご講演を本当にありがとうございました。参加者からは、「伊藤先生の憲法解釈に身が引き締まった」「士業として仕事に対する姿勢を改めて考えさせていただいた」などのご感想が寄せられています。
第2部交流会は、同じく麹町会館にて、伊藤氏の乾杯のご発声により始まりました。今回も司法書士や弁護士、不動産鑑定士の方々をはじめとするさまざまな士業・専門家のみなさまがご参加くださり、名刺の交換やご歓談でにぎわいました。
また、今回はわざわざ長崎より参加された司法書士でメンター会員の吉田修司氏や、盛岡よりお越しくださった社会保険労務士でメンター会員の山田裕幸氏にご挨拶をいただきました。吉田さま、山田さま、ご登壇をありがとうございました。
次回2月14日(火)開催の「メンタージャム東京」は、~次はどうなる中小企業税制、所得・資産・相続税制~ 『MJ東京・平成24年度税制改正セミナー』と題し、講師として税理士の齋藤厚氏(メンター会員)をお招きいたします。
みなさまのご参加を心よりお待ちしております。
2012年2月14日(火) 開催「メンタージャム東京」のご案内
~次はどうなる中小企業税制、所得・資産・相続税制~
『MJ東京・平成24年度税制改正セミナー』
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