【メンタージャム東京のご報告】
2011年10月 『原発被害と損害賠償について考える』～講師　湊信明氏

　10月13日（水）、東京・麹町会館にて、メンタージャム東京を開催いたしました。今回は講師としてメンター会員で弁護士の湊信明氏をお招きし、～どこまで広がり、誰がどう負担するのか～『原発被害と損害賠償について考える』と題してご講演いただきました。

■湊　信明 氏のご講演より

湊　信明 氏

　ご講演は、湊氏の自己紹介から始まりました。そして本日の流れとともに、講演のおおまかな内容と目的についてお話しいただきました。

　最初は湊氏に実際に依頼されている被災者を例に挙げて、「緊急時避難準備区域の今」について詳細をお話しくださいました。また、「通常の火事や交通事故などとは異なり、地域のコミュニティそのものが壊滅状態にさらされてしまったというこの現状をどう被害回復するのか、今までの損害賠償論とは全く違うものであるということをまず理解することが必要です」とおっしゃいました。そして、「無過失・無限責任」「免責条項」「損害賠償措置の強制」という今回の賠償責任を考えていく上で理解しておかなければならない論点について、資料を用いて熱く語ってくださいました。

　次に、今回の原発事故は、人災としての側面が強いことや、東電がマスコミ支配をなし得てしまう仕組みについてご説明くださいました。また、現在の日本にいかに甚大な損害が広がっているかという点に関して、二本松市の米からセシウムが検出されたことや、飯館村からプルトニウムが検出されたことを例に説明されました。政府がこれから行うと言っている除染についても、過去に行われたカドミウム汚染被害の土壌改善と同じペースで行うならば、高度に汚染された800平方キロだけでも2400年もかかる計算となってしまうなど驚くべきお話しもありました。また、ジャーナリストの上杉隆氏から、日本のマスコミがいかに真実を伝えていないかについてお話しされ、「子供たちにも事実を伝えて行かなければならないと、私は心から思います」とのお言葉ののち、東電の仮払い問題へとお話しは続きました。

　そして、「原子力損害の判定等に関する中間指針」のご説明では郡山市に住んでいる女性の例をもとに「自主的避難した方々については、中間指針では対象にされていない」ことや、慰謝料額も当初の半年は月額10万円補償されるものの、その後は月額5万円に減額されてしまうという現実をお話しくださいました。

　続いて、図を用いて、損害賠償支払い手続きの流れをわかりやすくご説明いただきました。さらに、湊氏が実際に損害賠償手続きを行われる方から借りていらした分厚い説明書や記入書を示して、「参加者のみなさんにもぜひご覧いただきたい」と、会場内に回されました。実際に被災者の方々に配布されている資料ということで、手に取った方々も熱心にご覧になっていらっしゃいました。湊氏の「お年寄りが、こんなに分厚いものを渡されて理解することができるでしょうか」とのお言葉が印象的でした。

　また、東電が提案してきた合意書のひな形には、一度、署名捺印を行ってしまうと、以後一切の異議申し立てができないようになっているという現実も加えてお話くださいました。さらに、慰謝料額について東電も中間指針と同様の立場をとっていることについて、「みなさんは避難生活を強いられた際に、いくら慰謝料をもらえば妥当だと思いますか」という問題提起をされた上で、交通事故の慰謝料を例に挙げて、現在の月額支払い基準の酷さをお話になり、弁護士会としては少なくとも月額35万円の支払いは要求していきたいと熱くお話しされました。
　湊氏は「重要な部分が報道されていないということ、そしてその裏側にある本当の真実を、私たちは見ていかなければならないと思います」とのお言葉で講演を締めくくられました。そのあとに引き続き行われた質疑応答も、参加者から積極的にご質問が寄せられました。
　湊さま、限られた時間のなかで、すばらしいご講演を本当にありがとうございました。

　第2部交流会は、同じく麹町会館にて湊氏の乾杯のご発声により始まりました。今回も司法書士や弁護士、不動産鑑定士の方々をはじめとするさまざまな士業・専門家のみなさまがご参加くださり、名刺の交換やご歓談でにぎわいました。講師の湊氏のもとには終始みなさまがご挨拶に向かわれ、講演会に引き続いて交流会も盛況に終わりました。

　次回12月3日(土)開催の『第11回　Mentor JAM Anniversary』は、～言葉を使わない無限の創造力～「パントマイムによる身体表現力発想法」と称して開催いたします。
　みなさまのご参加を心よりお待ちしております。

2011年12月3日(土) 開催　第11回　Mentor JAM Anniversaryのご案内
～言葉を使わない無限の創造力～
『パントマイムによる身体表現力発想法』

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